都議会議員選挙2025 候補者ロングインタビュー

青木英太 氏

無所属

プロフィール

1990年6月15日生まれ。円融寺幼稚園、東京学芸大学付属世田谷小・中学校、國學院久我山高等学校、立教大学経営学部経営学科 卒業。
民間企業を経て衆議院議員秘書を務める。
2019年目黒区議会議員選挙 初当選(2期連続)
2024年東京都議会議員補欠選挙 初当選/経済・港湾委員会 副委員長/東京都住宅政策審議会 委員

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目次

自民党会派について

――青木さんは昨年の都議補選で目黒区議から都議になられました。区議時代は無所属で、「新風めぐろ」の会派所属の後、1人会派で活動されていました。都議になってからは自民党の会派に所属されていましたが、なぜ自民党の会派に入ったのでしょうか?

会派として自民党に入ったのは都議になってからが初めてなんですけど、その前からずっと自民党に入りたいという意思があって、区議時代に「新風めぐろ」を抜けたのも、当時自民党入りを希望していたので、会派として方針も違ってくるし他のお二人(当時新風めぐろは吉野氏、かいでん氏の3人の会派であった)にご迷惑をかけてしまうということもあっての判断だったんです。

――今回、無所属で出馬されていますが、本当は自民党の公認が欲しかったということですか?

自民党の公認候補者を選ぶプロセスとして、選考会というのがあるのですが、目黒では昨年の10月あたりに選考会があって候補者の公募に私も手を挙げたんです。その後選考作業ののち、結果として目黒支部としては公認候補者を立てないという判断をされたと、私は理解しています。

――実際、自民党は今回目黒選挙区に公認候補者を立てませんでしたね。青木さんは自民党会派の都議として、自民党から推薦や選挙協力は受けているのですか?

いや、全く何もありません。自民党は公認も推薦もしないということなので、そういったものは一切ありません。完全に無所属としての選挙になります。

――最近、都議会自民党の裏金問題が連日報道されています。国会議員につづいて都議会までも裏金ということで、自民党にとっては大変厳しい選挙になっていると思います。実際に裏金が発覚して自民党の公認を外された状態で選挙に出る方もいます。青木さんは自民党から出れば今は逆風なのであえて無所属で出るのではという見方もあると思うのですが、実際は自民党から出たかったけど公認がでなかったということなのですね。

はい。自民党の選考会に手を挙げていたが、選ばれなかったというのが事実です。

――今回の裏金問題は、都議会自民党が政治資金パーティーを開いて、そこで集めたお金の扱いについて追求されているわけですが、青木さんは会派所属の議員として一連の問題に関わりはありますか?

都議会自民党の会派の1人ではありますが、そもそも私自身自民党員でもないし、政党の所属でもないので。その当時は自分は区議会議員で無所属でしたので、もちろんそのパーティーには参加していませんし、全く関与はしていません。

――同じ会派の仲間が引き起こした裏金問題について、どうお考えですか?

本当に許されるべきものではないと思います。みなさん慣例だったという話をされていますが、それが本当に慣例なのであれば、我々の代でしっかりとやめなければいけないことだと思いますし、政治資金パーティーのあり方だったり、資金管理の方法とかは、都民の方々に正々堂と言えるよう、きちんとプロセスを踏んでやらなきゃいけないということは、会派の一員として感じています。これは深く反省しなければならないことだと思いますね。

――当選した際には、この問題について同会派にいながらどのように追求していきますか?

政治倫理条例案のための検討委員会が開かれていて、当時の幹事長だった方々を参考人招致して質疑が行われています。インターネットでも委員会の動画が公開されています。都議会自民党としては、しっかりとそういった場で説明をしていると考えていますし、それでも足りないということであれば、今後も真摯に答えなければいけないと思います。

※筆者補足:6月6日に都議会本会議で政治倫理条例案が自民党・都民ファーストの会・公明党などの賛成多数で可決、成立した。政倫審の設置が主な内容で、条例施行前に起きた問題についての訴求や政治資金パーティーの禁止といった野党側の要望は盛り込まれず、実効性には懸念が残る。また、検討委員会の参考人招致は元幹事長2人だけで、裏金が発覚した都議本人の招致は見送られ、全容解明には至らなかった。

――このような裏金問題があったとしても、それでもやっぱり自民党に行きたいという理由を教えてください。

都議会議員の仕事をこの1年間やってみて思ったのは、やはり都議の仕事というのは1人では成り立たないということです。目黒区は、面積はそんなに大きくないですが、それでも町会が60以上ある中で、地域の要望を1人で聞いて回るのは限界があります。区議会と都議会で同じ党として連携ができれば、地域の細かい情報を区議さんから教えていただいて、都としてできることをやっていく。そういう数の有利さというのは一つあると思います。
都議会の自民党会派には30人います。(第一会派)人数が多ければ代表質問できる時間も増えますし、それぞれの持ち味を活かした質問だとか提案力とかは、大きい会派にいると実力も上がっていくのかなと。無所属時代と大会派にいる両方を経験しているからこそ、多数派にいることの意義は重要かなと思います。私自身、保守派の考え方なので、自民党の政策に通ずる部分もあるというのもあります。

区長選挙について

――多くの方がご存知だと思うんですが、青木英太さんは目黒区長の青木英二さんの息子さんです。青木区長は現在6期目となりますが、昨年の区長選の公約で区長を3年で辞め統一地方選と区長選を同時に行うと明言されました。(本来区長の任期は4年。2004年の薬師寺区長の自殺により区長選の時期が区議会議員選挙とずれることになった。)青木区長が勇退される場合、後継者として青木英太さんが2年後の区長選に出るということはあるのでしょうか。

現状、目黒区長選に出る予定は全くないです。まずは6月に行われる都議会議員選挙にしっかりと当選して、4年間の任期をいただけるので、都議の仕事をするというのが、まず僕の一番大きい部分なので。2年後に関しては何も考えていないっていうのが答えです。

――もちろん、今都議選を戦っていらっしゃるわけですから、2年で辞めて区長選に出ますとは言えないのはわかります。区長に挑む可能性は少しもない?

可能性はゼロではないと思うんですよ。区議さんのなかには区長をやりたいっていう方は大勢いると思うんですよ。区議というのは、出来上がった予算について適切かどうかとか、もっといいやり方があるんじゃないのかというのを監査する立場なんですけど、首長というのは予算を作る側なので、その楽しさは絶対あるだろうなと思います。首長というのは本当に重要なポストで、首長が変われば区の雰囲気もガラッとかわると思います。予算編成権のなかで、どういった思いで目黒区を作り上げていきたいかを色濃く出せますし、議員をやってると区長を目指す方は当然多いと思います。
僕の答えとしては、2年後の次の区長選に出る予定は全くないということ。もっと長いスパンで見た時に区長選に出る可能性は全くゼロではないということです。
なんかすごいですね。他のメディアよりも全然突っ込んで聞いていただいて、僕もお話しし甲斐があるというか。

――このような裏金問題があったとしても、それでもやっぱり自民党に行きたいという理由を教えてください。

都議会議員の仕事をこの1年間やってみて思ったのは、やはり都議の仕事というのは1人では成り立たないということです。目黒区は、面積はそんなに大きくないですが、それでも町会が60以上ある中で、地域の要望を1人で聞いて回るのは限界があります。区議会と都議会で同じ党として連携ができれば、地域の細かい情報を区議さんから教えていただいて、都としてできることをやっていく。そういう数の有利さというのは一つあると思います。
都議会の自民党会派には30人います。(第一会派)人数が多ければ代表質問できる時間も増えますし、それぞれの持ち味を活かした質問だとか提案力とかは、大きい会派にいると実力も上がっていくのかなと。無所属時代と大会派にいる両方を経験しているからこそ、多数派にいることの意義は重要かなと思います。私自身、保守派の考え方なので、自民党の政策に通ずる部分もあるというのもあります。

都議としての1年

――目黒区議を5年務められた後、昨年の補選で都議になられたわけですが、都議を1年やってみて、都議になって実現したことや、目黒区のことに関して区議時代ではできなかったことができるようになったことなどがあればお聞かせください。

まず区議会と都議会では予算が大きく違いますよね。目黒区も右肩上がりで今回1400億円の予算規模ですが、東京都は特別会計を合わせると15兆円と、スウェーデンの国家予算に匹敵する規模で、その規模のちがいは大きいなと感じました。
特に都議になってから自民党会派に入ったので、活動の幅が広がったというのは非常に強く感じます。自民党にはさまざまな業界団体から要望をいただくので、この一年で100団体くらいに要望のヒアリングをする機会をいただいたんですね。例えば築地(豊洲?)市場で働く人たちの声だったりとか、これまで目黒区議の時にはお会いできなかったような団体の方々のお話しが聞けたのが、ひとつ大きく変わったことだと思います。
インフラ関係は東京都には大きな予算があります。東京都はハード面、目黒区はソフト面といった役割があって、例えば自由が丘の再開発計画がちょうど立ち上がっているところなんですけど、線路の立体交差については補助金の大部分は都の予算なんですね。地域住民の方々の要望を区議会議員の方々とも一緒にお話を聞かせていただいて、それを東京都の方に要望を伝えていくという、都議と大きな規模の事業に関われるという意義は感じていますね。
ただ、根本部分は目黒区議会議員でも都議会議員でも同じで、目黒区のためにやっているという自負があります。東京都の15兆円という莫大な予算をどう目黒区のために活かしていくか、引っ張ってくるかというのが、僕自身のポリシーとしてやっています。

――業界団体の要望を聞いて都に届けるというお話がありましたが、青木さんは「東京一身近な都議会議員を目指す」というのをキャッチフレーズにされていて、市民一人一人の声をどう掬い上げるのかという取り組みについてお聞かせください。

まず1つは情報発信のやり方で、今SNS、特にX(旧Twitter)の影響力はすさまじくて。Xの私の投稿に対してコメントをしていただいたり、DMだったりとか、住民の方々が議員に連絡を取る手段がかなり増えてきていると思うので、しっかり情報発信をして伝えていくっていうところだと思います。
あとは、ネットだけじゃなくて現場に出るっていうのも大事だと思っています。現場第一主義って区議時代からずっと使ってるフレーズがあるんですけど、とにかく地域に出まくるんです。消防団に入ったり、町会の新年会とかお祭りとかにとにかく顔をだして、覚えてもらわないと相談もしてもらえないので、地域に出る実践は続けています。

それと、月に一回「メグトーク」という都政報告会をやっています。僕が議員になる前、学生時代からいろんな政治家さんの報告会に行ってたんですよ。そこで感じたのは逆に政治家との距離を感じてしまったんですね。なぜかというと、普通は報告会って年に1〜2回しかやらなくて、400人くらいいる会場で議員さんが一方的に話していて、最後に質問どうぞって言われても質問する雰囲気じゃなかったっていう。
なので、僕は議員として相互コミュニケーションを大事にして、報告会も高頻度でやりたいと思っていたんです。コロナがあってなかなか集まることが難しい時期もあったんですけど、コロナ後は月一でやろうと。5月で19回目の開催でした。
「メグトーク」は毎回地域で活躍されてる方をゲストでお呼びして話してもらうんです。まず僕が30分都政の課題についてお話をして、30分をゲストの方のお話を聞いて参加者も車座になって話をするという形です。
毎回毎回、僕が喋ってくださいよと直接声をかけていろんな方に来てもらっています。防災活動している方や、銭湯のオーナーさん、学童クラブを運営されてる方、幼稚園のお母さんや商店街の会長さんとか。そうやって、僕なりに地域の方々の声を拾っていく努力はしています。

――とてもいい取り組みをされていますね。少し話は変わりますが、今のお話で学生の頃から政治に興味をお持ちだったようですが、政治家になろうと思ったのはいつ頃から意識されていたんですか?

あまりこれは他の人に話したことないんですが、自分の父親が区長で叔母が区議会議員をさせていただいていて、僕は三兄弟の長男なんですが、区長の演説会とかに三兄弟が行くと盛り上がるんですよ。当時団子三兄弟が流行っていたりして。その時に「英太君、君は将来政治家だね」みたいにいろんな人から言われていたっていう意識はありました。親が区長だと学校でもいじられるんですよ。「税金で飯食ってるんだろう」みたいな。でも僕自身すごいポジティブなんで、自分の親の職業を友達がみんな知ってるってすごいことなんだなって、漠然と思ってました。そのあたりから政治家って素晴らしい仕事なんだなって感じていて。明確になったのは大学生のときに就職活動をする前に自己分析ってやるじゃないですか。自分がどういう職業に向いているのかっていう。自分としてはやっぱり地元に貢献できる仕事がしたいっていうのがまずあって、では具体的に何をするのかというと、地域密着で目黒区のために働くのは目黒区議会議員だろうと。区議の仕事で目黒に貢献したいという思いがありました。
とはいえ、年齢的にすぐには選挙に出られないので、(区議の非選挙権は25歳)宅建を取って1年間不動産会社に就職をして、その後に知り合いのつてから国会議員の秘書を4年務めました。鹿児島選出の衆議委員議員で野間健(のま たけし)さんという方なんですけど、当時は無所属でその後希望の党とか最後は立憲民主党にいた方です。自民党じゃないんですけど、とにかく現場を知りたいという思いで、紹介していただいたというのもあり飛び込ませていただいたという。基本的に永田町の事務所にいたんですが、政治の大変さをすごく感じました。

政策について1 火葬場問題

――今回の都議選で掲げている公約について、政策の中身についてお聞きしたいと思います。まず火葬場のトピックについて。23区内は公営の火葬場が少なく、民間の東京博善という会社が独占状態にあって、他の地域に比べて火葬場の利用料が高額になっているという問題ですね。これはどのような対策をお考えですか?

火葬場の指導監督権限を持っているのは基礎自治体にあるので、最終的にはやっぱり自治体に動いていただかないといけないので、都としてどんどんプッシュしていくしかないと思っています。都議会でこの火葬場の問題を取り上げて自治体を巻き込んでいくことが大事だと思います。

――目黒区は、港区、品川区、目黒区、大田区、世田谷区の共同事業として臨海斎場を大田区に持っていますよね。23区外ですと、府中や多摩とかはそれぞれ市営で火葬場をもっていて、市民は格安や無料で使えるようになっています。臨海斎場のような公営施設を増やすとか、それこそ東京都が作れば解決すると思うのですが。

東京博善の火葬場料金が倍近く値上げされているという問題なので、民間の火葬場ですから、公営をつくっても料金が下がるとは思えないです。

――低価格の公営火葬場があればそちらを利用する人が増えるでしょうし、そうすれば市場原理が働いて東京博善が値段を下げるか、もしくは富裕層向けに高価格帯のサービスで棲み分けになるのか。いずれにせよ、低価格で利用できる施設があるのは市民にとってありがたいことですが。

今後少子化で人口が減っていく中で、新しい施設を建てるのは負の遺産になってしまうのではと思うんですね。

――国全体としては人口が減っていったとしても東京の人口は圧倒的に多いわけで、コロナのときから死亡者数が増えて火葬場の空きがない、1週間以上待ちのような状況が起きていましたよね。多死社会を迎える中で、果たして火葬場が足りているのかという疑問はありますが。

僕は火葬場の数は足りてるという認識でいて、今、東京博善の利用料が上がったことで利用率が低くなってるんですよ。
厚労省の通知でも火葬場は利益追求しちゃいけないとなっていて、まずは既存の民営のサービスの値段を適正化して利用しやすいようにするというのが第一だと思います。

――火葬場や斎場は東京都が許認可権持っていますよね? 都の条例で料金に関して一定のルールを作るなどすれば直接的に管理監督できるんじゃないかと思うんですが、どうでしょうか。

そういった条例や価格規制など、直接的に東京都が関与できる体制というのも必要かもしれないですね。今、23区長会で東京博善に対して要望を出しているそうですが、それでも値段が上がっているのが現状です。独禁法とかの兼ね合いもあるので、いろんなステークホルダーを調整して東京都がリーダーシップを取っていく必要があるかもしれないですね。

政策について2 医療的ケア児

――政策の2番目に医療的ケア児(以下 医ケア児)を取り上げていますね。医ケア児と子どもを支える家庭の問題、本当にやらなければいけない取り組みがいっぱいあるのが現状ですが、その中で何を進めていこうとされているのですか?

※医療的ケア児:吸引や経管栄養、人工呼吸器の管理など生命維持のために日常的に医療機器や医療的ケアを必要とする児童のこと。日常生活を送るために家族や介護のサポートが必要で、子どもを支える家族の負担軽減など社会生活の支援の拡充も必要になっている。全国の医療的ケア児は約2万人いると推計されており、国の施策として医療的ケア児及びその家族に対する支援が急速に進んでいるが、社会的認知の低さや、医療、福祉、保健、子育て支援、教育機関の重層的な支援など必要な取り組みの課題は大きい。

この前ガブリエルさんに視察に行かせてもらいました。(NPO法人ガブリエル:目黒区中町にある重症心身障害児・医療的ケア児のための療育施設。)待機児童対策が進み、目黒区では健常者のお子さんは、数字上ですけどみなさん保育園に預けることができていて、子どもを保育園に預けて保護者は働きにいける環境がありますが、チューブや人工呼吸器をつけているお子さんを持つご家庭の方は、なかなか子どもの預け先が見つからないっていうことがあって、大きな問題だと思っています。
目黒区には医ケア児を受け入れてくれるガブリエルさんがありますが、目黒区にもっとそういう施設を増やしていきたいっていう思いがあります。

――ガブリエルさんは仕組みとしては「児童発達支援・ 放課後等デイサービス(以下 児発・ 放デイ)」ですよね。目黒区は23区の中でも福祉政策についてはいろいろな取り組みを進めている自治体だと思いますが、東京都の施策として何ができるのか、何を変えていかなければならないのか、もう少し具体的なお話を伺えますか。

※「児童発達支援(児発)」と「放課後等デイサービス(放デイ)」:児童福祉法に基づく障害児通所支援施設。児童発達支援は未就学児を対象に日常生活に必要なスキルの獲得や集団生活への適応訓練などの支援を受けられる。放課後等デイサービスは小学生〜高校生を対象とし、 主に放課後や休日、長期休暇に通所できるいわゆる学童クラブのような施設。利用には「通所受給者証」が必要で、ひと月に利用できる回数の上限が子どもや家庭環境の状況によって決められている。

いろいろ課題があるなかで、一つは介護する看護師さんの人材不足で、ガブリエル代表の松尾さんがおっしゃってたんですが、看護師の資格があっても重度の医ケア児の対応ができる人が少ないそうなんです。人工呼吸器とかチューブの付け替えであったりとか、普通の看護師さんではなかなか対応できないという実情があるということで。
東京都して、医ケア児の対応ができる看護師の研修であったりとかそういう体制を整えているんですけど、実際その研修を受けている人数が100人に満たないと聞いていますから、まずは対応できる看護師さんの育成に東京都が注力していかなきゃいけないのかなと思っています。

――人材育成が必要ということですね。人材が増えない原因には、医ケア児に対応できるスキルを身につけたとしても働く場所がまだまだ少ないことや、リスクとスキルの高い仕事にみあった収入が保障される必要もあると思います。

そうですね。そこはガブリエルさんのような放デイ施設を増やしていくための実質的な財政支援をしていく必要があると思います。

――「児発・放デイ」は必要な施設だと思いますが、制度的に保育園や学童のように毎日常に預かってもらえるわけではありません。施設で過ごす以外の時間の家庭での負担がかなり大きいです。生命維持を医療機器に頼っているため、例えば災害などで停電が起きると命の危機に直結します。そのような家庭の支援はまだまだ足りていないと思います。インクルーシブの観点からは健常児の子どもと一緒に過ごせる保育園・学校の体制が整わないと社会的認知が広がりません。このように医ケア児の問題を取り上げていただけることはとてもありがたいことですが、まだまだ社会的に“見えない存在”になってしまっているので、施設の問題もですが、家族のサポートも広げていただけると嬉しいです。

日常的に24時間ずっと気が休まらないというのは本当にそうですよね。そういった施策についても勉強させてもらって考えたいと思います。ガブリエルの松尾さんに「メグトーク」のゲストに来ていただいて話していただいたんですけど、資金面など運営の大変さもですが、何より医ケア児に対する理解が低いのが大変だとおっしゃっていました。今のガブリエルの場所は、100件ちかく物件を探してようやく目黒区内で見つかった場所だそうで、障害者の施設はお断りというオーナーさんもたくさんいたとおっしゃってたんですよ。拠点を増やしたいけど新しい物件が見つからなくて、地域住民の方に障害者の子どもに対する理解を広めないというのは、聞いていて切実な問題だと思いました。

聞き手&写真:植田泰(めぐろ区民ジャーナル編集委員)

外遊びフェス「ビオキッズ」実行委員長、映画「あそびのレンズ」プロデューサー、めぐろ子ども子育て連絡会 会員、めぐろあそびばねっと メンバー、そとあそびプロジェクト・せたがや 理事、一般社団法人 日本プレイワーク協会 理事 ほか。

2013年より世田谷区の羽根木公園で外遊びをテーマにした野外フェス「ビオキッズ」を主催。世田谷における民間発の外遊び啓発事業として成果をあげる。 めぐろ子ども子育て連絡会や、めぐろあそびばねっと など、目黒区内で子ども・子育て支援の活動を続ける。 本職はグラフィックデザイナー。