目黒区長選挙2024 候補者ロングインタビュー

河野陽子 氏

プロフィール

東京都生まれ。湘南白百合学園高等学校を経てフェリス女学院大学卒業。
令和5年度 目黒区議会議員選挙3期目当選。
2023年度 自民党目黒区議談・区民の会 幹事長(2024年2月まで)
子どもの事故予防議連、犬猫殺処分ゼロと動物関連の社会問題に取り組む地方議連。
防災士、目黒日中友好協会理事。

公式Webサイト:https://konoyoko.com/

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目次

来歴

――現デジタル大臣の河野太郎さんとの2連ポスターを街中でよく見かけます。河野太郎さんとはどのような関係になるのですか?

河野太郎さんとは“はとこ”の関係になります。

太郎さんのお父さんが(元衆議院議長の)河野洋平さんで、太郎さんのおじいさんが(元副総理の)河野一郎さん。一郎さんの弟で参議院議長を務めた河野謙三が私のおじいさんなんです。

おじいさん同士が兄妹なので、太郎さんとはいとこの子ども同士のはとこにあたります。

――経歴に湘南白百合学園 小・中・高等学校とありますが、生まれ育ちは河野家の地盤の神奈川なんですか?

生まれたのは都内で、小学校に上がる時に家族と神奈川に引っ越して、神奈川で育ちました。

 

――目黒に住むようになったのはいつごろから?

結婚して30年くらい前から目黒に住んでいます。娘も3人いて目黒で育ててきました。

 

区長選に立候補した理由

――区長選は無所属で出られるということですが、自民党を離党されて党籍も抜けられたのですか?

自民党員のままで党籍は抜けていないです。

今、自民党にとっては逆風じゃないですか。だから、自民党隠しをするために無所属で出たんじゃないかと言われると、それは違って、他の政党や政治団体、多くの方に推薦をしていただきたいという意味で無所属で出るわけで、自民党を隠すつもりはありません。

他の候補の方も無所属で出られると思うんですが、首長選挙というのはだいたい無所属で出ることが多いので、そういうものだということです。

――自民党会派幹事長を辞してでも区長選に出馬された理由を教えてください。

8年間区政を見てきて、目黒区はいろんな場面で良くも悪くも石橋を叩きすぎる、つまり慎重すぎてなかなかコトが進まない。リーダーの顔が見えないというのがあって。

たとえば、ChatGPT(生成AI)というのが出てきて、自治体で一番最初に導入するといったのが横須賀市だったんですが、それで視察に行って話を聞いてみると、「ChatGPTは自治体でも活用できるぞ」と首長(市長)が決めると、すぐにプロジェクトチームができて半年くらいで導入できている。
首長が、これは住民のためになる、行政の働き方改革になると判断して指示すると、すぐ動いていく。その中でうまくいかなければ方向転換すればいいので、そういう行政を動かしていくというところに、目黒区はどうしても首長の顔が見えないんです。

20年やってて、決められないことがあるから、部下の人たちは失敗することが許されないのでどうしても慎重にならざるを得ないじゃないですか。だから一つのことをやるのにすごく時間がかかっちゃう。
でも今の時代、スピーディに変化していくなかで、他の自治体行政はどんどん次のフェーズに移っていってるのに、目黒はまだそこにいるの?っていうことが結構あるんですよ。

――自民党は目黒区議会ではずっと最大与党で、他にもキャリアの長い区議の方もたくさんいらっしゃる中で、河野さんが区長候補に選ばれた理由はなんですか?

今目黒を変えられる人に区長を変えていかなければという時に、私ならできるんじゃないか、挑戦したいという思いがあったと同時に、河野陽子だったら応援できると自民区議団の9人全員に私を推薦していただける流れになったので、それで決断に至りました。

――今回、めぐろ未来プロジェクトという名前で活動されていますが、これは新しい政治団体ですか? そしてめぐろ未来プロジェクトから区議補選に出られる新井かよこさんも無所属になるんですか?

めぐろ未来プロジェクトは私が無所属で活動するための政治団体です。

新井さんは最終的に自民党の公認候補になります。

多選禁止

――ここから、公表されている政策について伺います。まず始めに、多選禁止とありますが、河野さんは区長として何期されるおつもりですか?

長くても3期かなと思っています。

時代がスピーディに変わっていく中で常に時代を先読みする感覚が必要だし、私の年齢的なことを考えても、私の役割は今目黒のリーダーを変えて、目黒区をもっと便利でもっと暮らしやすく、もっと区民により添った行政を作っていくために働きつつ、次の世代につないでいくことだと思うので、70歳80歳までやろうというつもりはないです。

もちろん、3期できるかどうかわからないし、それは区民のみなさまが決めることなのでなんともいえないですけど、もしそういう機会をいただけるのであれば、2期か3期かなって思ってます。

今回、現職の青木さんが6期目は3年でやめて退職金をもらわないと言い出しています。だったら今回ももらわなければいいじゃないと思いますけど…。

目黒は2004年に悲しい事件がありましたが(注:前区長・薬師寺氏の自死)、それで区長選挙の時期と統一地方選挙の時期がずれちゃったじゃないですか。
区長選と区議選を同日にすることで選挙費用の7000万〜1億円がかからなくなるというのもあり、同日選にすべきなんですけど、区長が区民の付託を受けて当選したのに3年でやめるというのはなかなか難しい決断なんです。でもどこかで決断しないといけないと思うんですね。

なので私は2期目か3期目のときに、区長の職を投げ出すという意味ではなく、次の世代につなげていくために3年でやめようと思っています。

区役所のオンライン化・デジタル化

――次の政策課題として、区役所のオンライン化・デジタル化が挙げられていますが、デジタル推進というと河野太郎さんのイメージが強いんですが、その影響はあるんですか?

そうですよねぇ。
ほんとに迷惑なんですって言ったら怒られちゃうけど(笑)、私は昔からデジタルに強くて、自民会派の中でも私といその(弘三)さんはICTとかデジタル化に興味あって、太郎さんがデジタル大臣になる前から、今でこそDXだなんだって言われてますけど、区議になった当初から「ICTは進めていくべきだ」って言ってたんです。

近隣区は民間から専門性のある人材を取り入れて進めていて、目黒でもそれを進めるべきだってずっと言ってきているので、河野太郎さんの影響じゃないです(笑)。

――オンライン化の政策の一つに、子育て支援でLINE活用でプッシュ型支援とありますが、具体的にどういった情報を発信していくおつもりですか?

今、目黒区が導入している「母子モ」っていうアプリ、使いにくくないですか?

――目黒区ではこれまで「めぐろ子育てホッ!とナビ」でWebやアプリで情報発信をしてきました。区民協働型プロジェクトとして民間の編集委員が「すくなび」でいろいろな記事を配信しています。広報なので区報や目黒区の公式サイトと同じ情報になってしまうので、LINEで配信といっても配信チャンネルが増えるだけなのかなと思うのですが。

他の自治体でもプッシュ型の子育て支援が始まってて、自分から情報を取りに行かなくても相談会のお知らせとか入ってくるじゃないですか。

港区が相談会やイベント情報をプッシュ型でやっているのが好評だそうなんです。情報をどんどん出していくことで、利用者が選んでいくことが大事なんじゃないかと思います。

――では河野さんが考える、子育て世帯が必要としていて、でも届いていない情報って何だと思われますか?

若い方は自分でいろいろ調べて情報を取ってらっしゃる方多いと思いますけど、それでも情報にたどり着かない人もいるし、たとえば病児保育の空き情報なんかが区の方で一括して見れたりしたら便利じゃないですか?

――病児保育は施設によってオンラインで空き情報を見て予約できるWebサービスを導入しているところがあります。
各施設の空き情報が一覧で見れたとしても、空いてるからすぐ利用できるというわけではなく、それぞれの病児保育所にまず登録してからになるので、実際は個々の施設とのやりとりになりますが…。

さておき、情報発信を増やして選んでもらうには、そもそも相談会やイベントなどの子育て支援の施策が充実してないと発信できないですよね? それについてはどうお考えですか?

最近、目黒区でひきこもりのオンライン相談を始めることにしましたという報告が委員会であったんですよ。
ひきこもりの人にはオンラインが一番つながりやすいので、入り口をつくることはとてもいいことなんですが、でも目黒区はつながっても支援する仕組みがないんです。

私は児童相談所の設置については消極的ではあるんですけど、これから目黒区は児童相談所の設置に向けて動いていく中で、支援する仕組みをつくってから入り口をつくらないと、ドアを開けたら真っ暗っていうことになりかねない。

――目黒は、ひきこもりを含め若者支援や不登校支援の活動が少ない状況にあります。

目黒にはほとんどないですよ。近隣区では行政が旗振り役で、地域で支援をしている民間の事業者の人たちを連携させて、委託して運営してもらってるんです。

目黒は不登校の子どもが増えていますよね。学校に行けなくなった子どももどこかでちゃんと社会につながる必要があると思うんです。
居場所作りを積極的にやって、横につながっていく必要があります。だから、もっと行政が現場の事業者の声を聴き取って目黒に合った形を考えて作っていくことが大事だと思います。

目黒区は小学校の特別支援員の方をたくさん採用して、積極的に発達特性のあるお子さんやグレーゾーンのお子さんのサポートをしています。でも支援員のみなさんは発達支援の専門家ではないんですよ。
現場の支援員の人たちがもっと発達支援について知りたい学びたいと思ってもその場がないと。

目黒には「発達障害支援拠点 ぽると」があるので、講座とか研修で連携したらと提案したら、こっちは障害者支援課、こっちは教育委員会だからできないって。

縦割りの弊害を取り払っていかないといけないんですよ。

縦割り行政の解消

――どうやったら行政の縦割りを解消できますか?

国(厚労省)が作った縦割り解消のための「重層的支援体制整備事業」(https://www.mhlw.go.jp/kyouseisyakaiportal/jigyou/)っていう制度があるんです。

これを導入しろって言ってきてるんですけど、目黒区はやらない。

役人のみなさんはすごく一所懸命されていますし、役人を非難するつもりはないんですけど、この20年で硬直的な態勢になってしまっている。

行政は区民ありきだと思うんです。もちろん行政も区民のためを思って働いてるんだけど、私から見たらまだ足りない。
とにかくスピードを持って取り組まないと、今支援が必要な人が取り残されてしまう。それを決めるのがトップなんです。でも今は一つのことをやるのにも一から検討して丁寧にってやるから進まないでしょ。

見てて歯がゆいの! だから変えたいの!

昔はもっと役人が地域を回って、現場に入って声を聴いて、それを形にしてきたけど、今は区役所の職員が外に出なくなってる。
私が区長になったら、副区長のポストを増やして、地域を回る役職を作りたい。

区役所は「区民の役に立つ所」って書いてあるわけだから、区民のためにどうしたら役に立つかということを、町に出て声を聴いてこい!っていうのが大事。
役所の中にいたら何も聴こえないよ、はっきり言って。

なので、外回り担当の人を置いて、もう一人はDX担当の人を外部から呼んで、変えていきたいです。

区民センターの再開発について

――区民センターの再開発についてどのようにお考えですか?

8年前に区議会議員になった時に、足腰の悪い母が目黒に来て、区民センターに行った時に、障害者用トイレがドアじゃなくてジャバラのカーテンで仕切られていて、「なんて目黒区遅れてるの!」って言われたんです。

建物の耐震性もよくないし、構造的にバリアフリーにできないし、やっぱり建て替えないといけないです。

基本的に区民センターの建て替えは賛成の立場です。

そのなかでも特に、私たちの会派は、目黒区美術館とその学芸員はとても素晴らしいので、きちんと機能を残した上で進めるべきだと言ってきて、そのように進めています。

――でも公表されている計画では美術館は現行のものより面積が少なくなってるんです。

そんなことはないです。必ず同じ広さをとるようにしているはずです。

具体的な設計ができてないからなんとも言えないけど、PFIだから民間からの提案がどのようなものが出てくるかですけど。公園を広くするために条例を変えてプールとかを一ヶ所に集約するって考え方なんです。

(注:数字ベースではあるものの、公表データからは美術館・図書館・児童館の面積が減少していることが読み取れます。詳しくは後日公開する区民センターについての記事をご参照ください。)

――PFIの仕組みが、区民センターのような複合的な施設をどこの業者が担うのか、図書館や児童館の運営もふくめぜんぶそのPFIの企業がやるのか、そのあたりどうなるのかよくわからないのが不安です。

PFIはJV(PFIではSPCという複合事業体)で運営されます。

建設はゼネコンがやって、図書館の運営はたとえばTSUTAYAがやってとか、それぞれ専門の事業者が集まってやるんです。

――どの事業者が組んでSPCをつくるのか、その組み合わせは事業者側が決めるわけですよね? 私たちが選べるわけではない。

それは、どの事業者が一番いいのかを区と学識者でつくる選考委員会で検討して決めます。

――その選考委員会に一般区民は入らないですよね。

このように決定しましたというのはお知らせしますけど、そのプロセスに直接区民が参加するのは難しいですね。

――今回の計画で、初期費用とランニングコストにおいて目黒区がいくらプラスになり、PFI事業者が継続的に公共サービスを続けられるための収益をいくら上げられるのか、具体的な金額が出ていません。これでは区民にとって大切な公共施設とサービスを安全にPFIで民間委託できるのか、判断することができません。

経営計画についてもこれまで検討されてきていることなので、大丈夫だと思います。私としてはこれまで賛成してきた立場なので、このまま進めていくつもりです。 ただ、説明責任はあるので、見えない部分があるのであれば明らかにしていかないといけないと思います。

自民党の裏金問題について

――自民党の裏金問題について。一部報道で、国会議員が地方議員に盆暮れに氷代・餅代としてお金を配っていて、その原資が裏金だったのではといわれています。率直に伺います。河野さんは氷代・餅代を受け取っていましたか?

ないです。本当にもらったことないです。

活動費として自民党支部から受け取ることはあるけど、それも少ないですよ。

もちろんきちんと収支報告書に載せていますし。逆にそれを書かない人がいるというのは、信じられないです。

ちゃんとしてる私たちからしたら迷惑ですよ。はっきり言って。

――河野さんは受け取っていないと。でもこれまでの事件で、自民党の議員である東京15区の柿沢未途議員や広島の河井案里・克行議員が実際に地元議員にお金を配っていました。他の目黒区の議員の方で受け取っていたりとか、そういう話をきいたことはありますか?

確かにそういうのありましたけど、少なくとも目黒の自民党は受け取っていないです。本当に。

目黒の自民党はパーティもしないし。お金配るって、それって買収じゃないですか。そういう感覚になること自体がおかしいから。

聞き手&写真:植田泰(めぐろ区民ジャーナル編集委員)

外遊びフェス「ビオキッズ」実行委員長、映画「あそびのレンズ」プロデューサー、めぐろ子ども子育て連絡会 会員、めぐろあそびばねっと メンバー、そとあそびプロジェクト・せたがや 理事、一般社団法人 日本プレイワーク協会 理事 ほか。

2013年より世田谷区の羽根木公園で外遊びをテーマにした野外フェス「ビオキッズ」を主催。世田谷における民間発の外遊び啓発事業として成果をあげる。 2013年よりボランティアグループ「マンマの会」(現在はNPO法人 マンマの会)と共に目黒区柿の木坂に子育てひろばcoccoloを開設。めぐろ子ども子育て連絡会や、めぐろあそびばねっと など、目黒区内で子ども・子育て支援の活動を続ける。 本職はグラフィックデザイナー。