社会教育の場は、女性たちから
皆さんは「社会教育法」をご存知でしょうか。
市民の学ぶ権利「公的学び」を保障するもので、「施設の設置及び運営、集会の開催、資料の作製、頒布その他の方法により、すべての国民があらゆる機会、あらゆる場所を利用して、自ら実際的生活に即する教養を高め得るような環境を醸成するように努める」と、国や地方公共団体の任務を規定し1949年(昭和24)制定、現在は生涯学習振興法(1990年制定)に組み込まれています。
この具体的な場に、戦後GHQが掲げた”婦人解放”〜日本の婦人教育の遅れへの指導から始まった「婦人学習会」がありました。戦時中、自由な学びに飢えていた女性たちが集まり、情熱を持って行政と共に創っていったもので、一方向ではない相互学習「話し合い学習」が中心だったそうです。
当時の学習会を体験することはできませんが、今見ても先進的な”学びの場”だったと言えるのかもしれません。
目黒区は先進区
目黒区は、社会教育の先進区と言われた時代があったそうです。
PTA単位で開かれていった「開設婦人学級」は主に10回の連続講座で、講座の後に自主学習グループが雨後の筍のようにどんどんできていきました。
区には、区民と共に学び働く「社会教育主事」が在任し、その功績も大きかったといいます。
めぐろ学習グループ連絡会・現代表の五十嵐さんが参加した頃は、最盛期の熱気は下火になっていたものの、当時の空気を体験したメンバーも健在で活動をリードされ、折に触れ草創期のエピソードを聞くのが楽しく「先輩女性たちの奮闘があってこそ連絡会の今があるのだと納得したものでした」。
婦人学習グループの連絡会は1974年に発足、1994年に「目黒区女性学習グループ連絡会」に改名。
2023年、現在の「めぐろ学習グループ連絡会(以下、連絡会)」となったのは、時代的にも運営的にもジェンダーを外し「みんなで」という判断でした。
多様なグループからなる連絡会
現在5つのグループからなる連絡会ですが、ざっと見ただけでその多様な活動が見え、雨後の筍のようにできていった勉強会のテーマが多岐に渡っていただろうことを思わせます。
大きな行事に、教育委員会と共催で開催する「合同研修会」があり、毎年秋に全4回の無料講座を開催されています。
〈 現在参加の5グループ 〉
●近代文学「森の会」・・東京大学名誉教授の小森陽一先生を講師に、近代文学を読みとく講座を開催
●目黒地域女性史研究会・・「坂のある町で」通史編・聞き書き集出版(2002)
http://www.domesu.co.jp/rist/0576.html
「坂のある町で 〜地域で活動する女性たちのあゆみ」出版(2022)
●生協パルシステム東京目黒連絡会 生活者の視点から社会の問題を見つめる学習会等を開催 https://meguroshouhiseikatsuten.org/過去の消費生活展/panelarchive-pal/
●世界の窓・地域に住む外国人、外国人を家族に持つ人たちとの交流と、グローバルな視野を含めた活動
●多言語 絵本の会RAINBOW
https://www.rainbow-ehon.com/rainbowについて-about-rainbow/
今とこれから
今年活動50年目を迎えた連絡会は、最近新しいメンバーを迎え、ホームページが立ち上がりました。
電子化が少し進み、研修会にも新たな参加者層を期待しているといいます。
また会員の高齢化も課題としてあり、さらに若い担い手の参加が望まれています。
1988年に社会教育事業の見直しがあり、開設学級が閉鎖して以降、学習グループができなくなって、連絡会は縮小傾向にあります。
カルチャースクールなど、趣味的な有料の講座が増え、連絡会の「平和と人権」というテーマへの関心も薄れてきたのではないかー
戦後79年が経ち、「平和と人権」と聞くと広島の平和記念像を思い出すが、退屈な社会科の授業と結びつく、はたまた左翼的な活動ではないかとレッテルを貼る、そんな人が増えている時代に思えてなりません。
けれど、戦争は今も終わることなく、「人権」の意味が多岐にわたることも見直され続けています。
二極化が進み、格差社会と呼ばれる今こそ、そして行政と共に提供する「市民の学びの場」にこそ、平和とは人権とはー と、多様な角度からの対話があり続けて欲しいと願います。
(今回取材に応じてくださった会の皆さんの、朗らかに生き生きと語って下さるご様子に、たくさん元気を頂きました。どうもありがとうございました。)
取材当日ご参加の皆さん・ 左から、廣橋泰子さん、柏木恵美子さん、五十嵐貴志子さん(代表)、滝本充さん
今秋/2024 予定されている研修会(全て土曜日、午後2時から〜)
・要申込/参加費100円 (資料代)
10/19 「地域と学校の協働活動」 地域全体で子ども達を支え、地域を創生する活動について
11/2 「能登半島地震の現状」 現地ボランティアから見た現状
11/16 「みんなでつくる図書館のあるくらし」
11/30 「難民について基礎から学ぶ」 難民、支援者、双方からの発信
●申込:めぐろ学習グループ連絡会ホームページ から↓↓
https://meguro-gakusyu.jimdosite.com
●電話申込・問い合わせ:五十嵐 Tel. 090 2167 2574/ Eメール. meguro-gakusyu@ymail.ne.jp
執筆者:佐野みと(めぐろ区民ジャーナル 編集委員)
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