都議会議員選挙2025 候補者ロングインタビュー
松尾ゆうき 氏
再生の道
プロフィール
1992年6月12日生まれ 33歳。目黒区育ち。
麻布中学・高校卒業、2016年3月 慶應義塾大学経済学部 卒業。
大学卒業後一貫して証券会社の投資銀行部門にて大企業向けのM&Aおよび資金調達案件の組成および執行に関与。主に不動産・J-REIT業界を担当。
好きな食べ物は、カレー、ラーメン、焼肉、寿司。愛読書は司馬遼太郎「坂の上の雲」。
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目次
「再生の道」から出馬
――松尾さんは、今話題の石丸伸二さんの新党「再生の道」から出馬されるということで、今回都議選に立候補された理由をお聞かせください。
私は、社会人経験を何年かしてビジネスマンとして力をつけた後に、政治の世界に行くっていうのを学生の時からイメージしていました。
具体的に政治のことで動き出したのはここ数年のことですが、どうやって政治家としてアプローチしていくのかを考えた時に、スケジュールや私の年齢、今32歳なんですが、落選してもその後ビジネスの世界に戻るチャンスがあるのかなとか、家族の状況とかいろいろ踏まえて、都議会議員選挙は挑戦の舞台として自分に相応しいんじゃないかと思って。
そのタイミングで、まさに再生の道を石丸さんが地域政党として立ち上げます、公募しますというのがマッチしたのが、今回の出馬の背景ですね。
――前回の都知事選の時は石丸さんを支持されていたんですか? 選挙の応援とかボランティアはされていましたか?
そうですね。支持していました。ただ、ボランティアとか、そこまではしていません。あくまで一有権者として応援したということです。
――都議選にあたり、これまでのお仕事を辞めて挑戦されるんですよね。前職について教えていただけますか。
大手証券会社の投資銀行部門で10年勤めました。大企業向けのファンドの提案や実行サポート、大型資金調達の提案をお引き受けするとか、そういう仕事内容です。
東京都の資産を収益化
――これまでお仕事で庶民が扱うお金と桁がちがう金額を動かしてこられたと思うんですけど、そういった知見からも、都政の特に財政についてアイデアがおありなんですね。
私自身、都議選に出る前に調べたのですが、東京都の予算って17兆円あるんですよ。これってスイスとかスウェーデンの一国の国家予算に準ずるレベルです。かつ資産としてこれまでの蓄積が4037兆円あるということで、これまた日本の大企業のトップファイブに入るくらいの財産なのです。辻立ち(街頭演説)をしていて皆さんにご説明すると、そんなに大きいの?と驚かれて、実はみなさんあまり認識されてないというのがありますね。
東京都の資産って特に不動産が多いんですけれど、結構収益化されずに放置されているものが多いので、そこをどうやって収益化させていくのか、収益化できれば増税なんかしなくても予算確保できるし、その分減税して市民の皆さんに還元できるんじゃないかっていうところが、私の今回のメッセージのひとつですね。
――不動産資産を収益化することの最終的な目的は、減税するということなんですね。
はい。減税も一つの還元の仕方だと思います。
――東京都の税収のうち、多くは法人税と(個人の)住民税が占めます。その2つの税金のどちらを減税したほうがいいとお考えですか。
私は住民税を下げるべきだと思っています。
――例えば、年収400万円くらいの家庭でしたら住民税が年間で16万円くらいになります。そのうち4割が都の税収、6割が基礎自治体の税収になり、都の住民税が64000円くらいになります。年間64000円の住民税をどれくらいまで下げるべきだとお考えですか?
それこそ下げられるだけ下げたほうがいいと思います。半分とか1/3とか。そこまで下げていいと思ってますね。
――昨年度の数字で住民税が約1兆円ですので、その半分を減税するとなると5000億円を不動産の収益化で生みだそうということですか?
はい。そういうことを真剣に検討すべきじゃないか、できるポテンシャルがあるんじゃないか、ということですね。
――物価高騰の今、生活を支えるために消費税減税をという論がありますが、東京都は住民税を半額にしますよ、その財源は不動産収入ですよと。
やっぱり働く人の負担を減らしたい。
給与明細を見てもらうとわかるんですけど、下手したら所得税より住民税のほうが実質多いんじゃないかと思うんです。みなさんの可処分所得を圧迫している要素なので、ここを少しでも下げるということは重要なポイントになります。
地方自治体が、税金をあげて収入を得るよりも別の方法を模索すべきじゃないかっていう発想が背景にあるということです。
――それは、東京都という不動産価値の高い都市部だから可能な方法ではないですか? 東京は持ってる資産価値が高いから住民税がかからないよ、だから住みやすいよ、となったらさらに東京に一極集中になりませんか? 石丸さんが都知事選の時に訴えていた「東京から地方へ」という公約と矛盾するのではと思って。
そういう意味では…そこをどう標準化していくのかというのは、議論の余地はあると思います。住民税を下げるというのは、東京都だけの課題ではなく全国的に取り組みをしていってもいいと思います。
都立高校を物流施設に!?
――東京都が持っている不動産がどれだけ無駄になっているかというお話なんですが、不動産資産のほとんどは道路、水道、鉄道といったインフラ、あとは役所、病院や警察、消防の施設、学校や福祉施設、あと公園ですね。このうち、どこが収益化できるとお考えですか?
道路とかはそのまま収益化することは困難だと思います。例えば水道局の庁舎ですとか、都立高校だったり、インフラではない不動産が収益化の対象になってくると考えますね。
――都立高校を収益化の対象にですか!?
都立高校はそこに通う学生さんや先生だけが使う場所ですが、見方を変えることによって物流施設とかに用途を変えていくことを考えてもいいと思っています。
――都立高校を物流施設に?? すみません、ちょっと何を言っているのかわからないです。
例えばですね、学校の校舎に備品倉庫とかあったりすると思うんですけど、学校の備品を集約して、空いたスペースを外部に貸し出してコンテナやトランクにするとか。少子化で少しずつ生徒数が減っているので、集約化していくと同じ建物のなかに使われないスペースができるので、そこをテナントとして貸し出すとか考えてもいいと思います。
――学校の運営を考えるとありえないアイデアだったので呆然としていますが…。学校はあくまで教育機関ですから、学生が勉強をしている空間に不特定多数の外部の人間が自由に出入りするというのは教育環境として問題があると思いますが。
もちろんセキュリティ面のことはありますし、学校は学生のためにあるというのが大前提なのは構わないんですが、裏を返すと、その学校の土地や建物って、学校に通う人のためだけにある必要がないんじゃないかって、この発想の転換をしていくことが大事じゃないかってことですね。
――学校が学生のためだけにあるかというと、その施設の役割って、災害時は広域避難場所や体育館が避難所になったりしますし、地域との連携のなかで運用されているわけですから…。
もちろん、そういうBCP対応(災害などの緊急事態における企業や団体の事業継続計画)の観点からスペースを残しておくのは必要です。それは別に否定しているわけではないですし。一方で、全く使われていない資産を寝かしておくままでいいのかという、ま、そこはバランスの問題ですね。
(ここで事務所スタッフさんが登場)今の学校の話は不動産を有効活用しようという例としては若干ちょっと難しいかなと。別の例のほうがいいのかなと。
そうですね、水道局などの職員が使う施設も、在宅勤務がより進んで働くスペースが減ってくるのであれば、そう言ったところを外部のテナントに貸し出すといったことですかね。
あと都庁の中にレストランが入ってるんですけど、職員の方の福利厚生の観点からかなり安い値段で提供されてますが、都庁はものすごくロケーションが良くて眺望もいいですから、高級レストランを外部から誘致して、そこでキャッシュフローのお金を稼ぐっていうこともあるんじゃないかなとか。
資産の使い方や位置付けなど、キャッシュフローを生み出すためにアイデアがあるのかを再整理していくということですね。
――資産を再整理すると5000億円の収益を生み出せる計算があると。
そうですね。あれだけの24兆円もの資産があれば、きっとできるだろうと思います。
公教育の質を上げる
――政策として小学校の公教育の質を上げる、これは石丸さんも記者会見でおっしゃってましたが、それについて詳しく教えていただけますか。
特に公教育と私教育の連携、学校がやることと塾がやることをうまく融合させることが大事だと考えています。
その理由は、中学受験にあります。
中学受験をさせたいと思っているご家庭は、高いお金を払って塾に通わせることになります。一方で、公立の小学校は義務教育としての役割上中学受験をする人のためにあるわけじゃないというところで、中学受験をさせたいご家庭の負担が大きくなってしまっているという現状があるのかなと。そこに問題意識を持っています。
特に目黒区は中学受験をする家庭が地域によって7〜8割のところがありますし、教育行政から中学受験という選択を外すことができないくらい大きな存在感になっているというところですね。
(※公教育=公立小学校、私教育=塾という意味合いで話されています。)
――その負担をどのように減らしていくのですか?
まずは時間的負担を減らしていくというところですね。塾の送り迎えやプリントの管理とかを保護者がされている。お弁当の手配とか準備をお母様がされている。小学校でやるべき(学習の?)管理の負担が全部ご家庭に入ってしまっている。そこで、公立小学校の進路指導の一環として中学受験の指導ができる。専門のメンターのような方を学校で雇用して、中学受験の相談を受けるとか。
目黒区では1人1台のiPadが配られていますので、タブレットを使って塾の授業が受けられるとか。
既存の授業の後に、中学受験のニーズのある生徒を集めて対策授業をする時間を設けるとか、そういう形でうまく盛り込んでいけば、ご家庭の負担を減らせるのではないかと考えています。
小学校の中に中学受験のサポートをする人を配置したりその時間を設けることによって、その分、塾に行くコマ数が減れば通塾の負担が減るということですね。
――今のお話と近い制度が、すでに東京都でスタディアシストとか地域未来塾という制度があります。目黒区はまだ導入していないですが。スタディアシストは学校で放課後塾の授業が受けられる、未来塾は地域住民が学校で学習サポートをするというものですが、それとはどう違うのですか?
そうですね。その既存の制度を進めていくという流れでいいと思いますが、あとはどこまで中学受験にフォーカスしてサポートしていく体制を作れるのかが重要だと思っています。
――スタディアシストや地域未来塾は、もともと目黒区選出の伊藤ゆう元都議が主導してできた制度なんですけど、収入格差による教育格差の是正というのが前提としてあって、お金を払える余裕のある人は塾に行けるけど、家庭の事情で行きたくても行けない子どもがいる。そこで習熟度に差ができるのはよくないから無料で受けられる学習サポート制度を作ったそうなんです。(詳しくは伊藤ゆう氏のインタビュー記事をご覧ください。)すでに塾通いをしている家庭の負担を軽減したいという部分で、少しニュアンスが違うのかなと感じたのですが。
まぁ、そうですね。東京都の制度を拡充していくべきと思うんですけど、その裾野を広げてお金を払える人にもサービスを提供できるようにしていった方がいいんじゃないかと。
年収1000万円以上ある家庭でも、中学受験を本当にやろうとすると300万円400万円とかかってしまうので、そこは行政課題として負担を下げていくことを考えないといけないのではと。
――目黒区の公立中学の話をすると、七中と九中、八中と十一中が統合して南中と西中になりました。子どもの人口はそんなに減っていないんですが、私立中学に行く子どもが増えたから、公立中学の生徒が減ってしまったからというのが学校統合の理由の一つです。公立小学校で私立中受験対策をやって私立中にいく子が増えたら、公立小学校の統廃合がもっと進んで、地域の公共インフラとしての学校が立ち行かなくなってしまうのではという心配があります。
まあ本来、中学受験をする人としない人によって利害対立があってはならないとは思うんですけど、ファクトとして存在する中学受験に対する意欲を踏まえて、行政サポートが薄いところをサポートしなければならないと考えたわけですね。
根本的なところはやっぱり、公立小学校の勉強だけでは、中学受験の対応ができないから、まず早稲田や日能研やサピックスに頼らざるを得ないっていう前提があるからですね。
――この話題でずっと気になっていたのが、親の時間的や金銭的な負担の話はあるのですが、当事者の子どもについての話が出てきませんでした。中学受験で大変な思いをしている子どもの視点についてはどうお考えですか?
まぁ、10歳11歳というまだ成熟してない時期ですから、子どもとして学校の勉強と中学受験に向けた準備のバランスをうまくコントロールしていくのが大事ということですね。公立小学校の先生に、中学受験の負荷がどれくらいかかっているのか、どれくらい大変なのかっていう歩み寄りができていない現実があるんじゃないでしょうか。
――学校制度の話でいうと、今年から目黒区の公立小中学校で3校がモデル校となってコミュニティスクールの制度が始まりました。先ほどの地域未来塾の制度も、地域住民による学習サポートプログラムのパッケージの一つとして、予算が出ますよという仕組みになっていますが、地域住民が学校運営に主体的に関わっていくという公立学校の在り方が大きく変わろうとしているこの時期に、中学受験サポートの問題をどう折り合いをつけていくのか、気になるところです。
僕は別に中学受験を推奨してるわけじゃないです。公立中学校がなくていいとか言ってるわけじゃないですよ。やはりセーフティーネットとして公立中学があっていいです。
でも一方で、現実に私立中学に行こう、行きたいと考えるニーズがファクトとしてある。小学校としてのやるべきことの境目がどうあるべきなのかということも含めて、改めて再整理する。そういう時期に来ているのかなという考えなんです。
聞き手&写真:植田泰(めぐろ区民ジャーナル編集委員)
外遊びフェス「ビオキッズ」実行委員長、映画「あそびのレンズ」プロデューサー、めぐろ子ども子育て連絡会 会員、めぐろあそびばねっと メンバー、そとあそびプロジェクト・せたがや 理事、一般社団法人 日本プレイワーク協会 理事 ほか。
2013年より世田谷区の羽根木公園で外遊びをテーマにした野外フェス「ビオキッズ」を主催。世田谷における民間発の外遊び啓発事業として成果をあげる。 めぐろ子ども子育て連絡会や、めぐろあそびばねっと など、目黒区内で子ども・子育て支援の活動を続ける。 本職はグラフィックデザイナー。